「こんかんちりょう」で変換すると「根幹治療」と誤変換されますが、ただしくは「根管治療」です。「神経の治療」とか「根の治療」とか他の言い方もします。ENDOという言い方もします。根管とは歯の内側にある神経(など)が入っている空洞のことです。
おそらく、多くの歯科医師が「地味だけど時間がかかるし点数は低いし、痛くなることはあるし、予後はハッキリしないし」というような理由で「イヤだなぁ」と思っている治療のひとつでしょう。自分もそういう歯科医のひとりです。
野球でいうとキャッチャーでしょう。地味で目立たないけど。重要と分かっていながら、必要と理解していながら「やりたくない」ポジションですよね。
普通「神経」と呼んでいる部分は「歯髄」と言います。
歯髄には神経以外に血管なども入っています。
(1) 歯髄を取り除くことを抜髄といいます。普通は神経が生きている状態なので、麻酔をしてから抜髄します。「麻酔抜髄(麻抜)」とか「注射抜髄(注抜)」などという呼び方もします。
(2) 神経が自然に死んでしまったり、抜髄によって神経が取られた状態で、根管の中が感染した状態を治療することを「感染根管処置(感根処)」といいます。
(3) 抜髄したり感染根管処置した後の根の治療を「根治」とか「根貼」とかいいます。
(4) 最終的に歯髄腔の中を樹脂で埋めることを「根充」といいます。これらを含めて「根管治療」といいます。
月刊保団連平成18年7月号では根管治療大臼歯の価格(おそらくトータルだと思います)は日本8,770円に対して、アメリカは72,093円だそうです。約8倍の差があります。オイラの高校の同級生も米国に住んでいるのですが、大臼歯の根管治療が日本円で約10万円と言ってました。
日米で価格差が8倍の物ってありますか? あったら教えてください。おおよそ身近な物で換算すると・・・40インチ液晶テレビ、アメリカで24万円だとしたら日本では3万円で売ってますか? アメリカの国内郵便ハガキは37セントだそうです。日本で5セントですか?年賀状が5円ってあり得ますか? 我々歯科医師は低料金の仕事をさせられているという訳です。(話がそれちゃいました。この愚痴、書き続けると何行にもなるので割愛します)
ふだん、「前歯には1本の神経があります」などと言います。オイラも言っちゃうことがありますが、正しくはありません。街路樹を見てください。木には幹がありますが、細い枝も沢山ありますよね。歯髄も街路樹のように細かい枝が沢山あるのです。またその幹も丸ではなく平坦だったり、狭くなったり雑多な形態をしています。
複雑な形態の歯、狭く見えない口腔内での作業。これを完璧に綺麗にすることは出来るはずがないと思ってます。出来ることはやります。でも100パーセント上手くいくことはありません。詳しくは症例を見てください。
※ ヨシダ歯科のHPで思わず根管治療を取り上げてますが、特に自分が得意分野で治療自慢がしたいためではありません。事例をもって、その難しさを理解してもらえれば幸いと思っております。
歯の神経(根管)は樹木のように細かい枝がたくさんあります。
70歳代の女性です。前歯のブリッジには問題を感じていませんが、何度も鼻の下の部分が腫れていたそうで。今回は大きく腫れてしまったということで来院しました。
点線部分に大きな嚢胞が確認できます。
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麻酔をして切開線を入れました。
赤丸部分に嚢胞があります。
この部分、中胚葉と外胚葉がぶつかる部分なので嚢胞が出来やすいのかな??なんて勝手に思ってます。
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骨膜剥離子で歯茎をめくってみると、固い骨があるハズの場所はフニャフニャです。
この穴はオイラが削った穴ではありません、骨が溶けて出来た穴です。
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患者さんからは「手術はコワイわ〜、何とかならないの・・・」と言われていました。こんなに酷いんですから納得してくれます・よ・ね?
内容物は嚢胞の壁を含めてグニュグニュしてます。
嚢胞摘出術・・・です。
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根の先端部分も取り去りました。
歯根端切除術・・・です。
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この症例はあまりにも骨の欠損が大きかったので「骨を作る秘密のアイテム」を入れておきました。
これ、ひとつで2400円なんですよね・・・別料金をいただくことは禁止されてますのでサービス・・
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穴の中は電気エンジンとか鋭匙などを利用してとにかく綺麗にします。
グニャグニャ部分の取り残しがないようにします。
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縫合(ナート:Naht)して終了です。
術中にオイラが「ナート、、曲で、、、」とか言い出したら手術は終了に近づいています。
このケースでは7針縫ってます。
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治療に何日もかかりますか?今の歯科医院は2週間に1回の予約なので、1本の歯を治すのに何ヶ月もかかります。
その歯科医院は意図的に2週間に1回の予約制をしているのではなく、患者さんの数が多すぎて2週間に1度の予約なのでしょう。治療間隔は2週間に1度でもかまわないと思いますが、感染のおそれがあるので詰め物が取れた場合は連絡をして受診しては如何でしょうか。(数日程度ならあまり心配有りませんが・・・)
それにしても、歯科医師過剰のこの時代に羨ましい歯科医院ですね。患者さんを引きつける何かをお持ちなんでしょうね。
治療回数は何回ぐらいかかるのでしょうか。1年間も同じ歯を治療してます。
これまた根気の良い先生ですね。自分の場合はほとんど2または3回でカタを付けようとします。神経が生きている場合は、諸条件が許せば1回で治療を終了したいと思ってます。
上の写真のほとんどは3回以内に治療を終えてます。何回も何回も同じコトを繰り返しても意味無いかなぁと思うんですよ。それとも、ヨシダはあきらめが良すぎるのかな?
治療は痛いですか?
一般的に云われる「神経を取る」という治療には麻酔をします。麻酔が効いていれば痛くはないです。ただし、急性症状がある時は麻酔が効きにくいです。神経が死んでいる時は痛くはありませんが、急性症状がある場合は痛みがあります。麻酔を施したりしますが、完全に麻酔が効いた状態にはなりません。
どちらにしろ、急性症状がある場合は辛いことがあります。
痛くない歯を治療したら痛くなりました。やぶ医者なんでしょうか?
上のチャート13のケースと同じですね。根の先を見てください、黒ずんでいるのが分かりますか?ここにバイ菌や膿がたまっている状態の歯です。慢性期は特に重い症状はないのですが、いつ急性化してもおかしくありません。
痛くなってしまった原因は、さまざまな要因が絡み合っていると思いますが、ヨシダ歯科ではこう説明しております。
レントゲン写真で黒く見えるところには、各種のバイ菌が生息しています。治療することによってバイ菌たちに大量の空気を吸わせてしまいます。バイ菌の中には 『空気がほとんどない場所でも生きていけるけど、空気があると一気に元気になる種類のバイ菌』 がいます。そういうバイ菌を刺激してしまうことがあるので、一時的に痛みが出てしまう場合があります。
ご理解いただけるでしょうか。
治らない場合はどうするのでしょうか。
多くの場合は抜歯となるでしょう。それ以外には歯根端切除手術という小手術をすることがあります。分かりやすく言えば「歯ぐきを切って根の先の悪い部分だけ抜歯する」という方法です。また、奥歯では抜歯再植といって「意図的に抜歯をして、口腔外で治療をして元に戻す」こともあります。
また、上のチャート17のように親知らずなどを移植する場合もあります。
名医を教えてください。
う〜ん、わかりません。
もし、貴方に時間とお金に余裕があるのでしたら、自費(大臼歯で5万から10万円ぐらい?)で、マイクロスコープを使ってじっくりと時間をかけて処置をしてくれる診療所がベストであろうと思います。
保険の治療費にマイクロスコープ代金+1000円というのは混合診療となり違反です。平気で違反をする歯医者は信用できませんので辞めましょう。
※ 保険診療だけでも上手な歯科医はいると思います。
どのような器具を使うのでしょうか。
ヨシダ歯科で使っている根管治療特有の器具をご紹介します。ミラーとかピンセットなどの基本セットはもちろん使いますよ。
リーマー、ファイル各種
自分は好んでSファイルを使っています。色とりどりで綺麗でしょ。この色、国際規格で決まってるんです。 |
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ブローチ、クレンザー
神経の中は細いですから、器具も当然細いです。 |
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根管長測定器
歯の長さを測る器械です。色んなメーカーから色んな物が発売されてますが、どれも同じ・・・かな。
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根管拡大機器
多くの根管治療機器が発売されてますが、このX-スマートが今までの中で一番優れていると思います。
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HOT SPOT
下のオブチュレーションガッタを溶解させる器械です。 |
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根充材料
ほとんどのケースでオブチュレーションガッタのみを使います。シーラー(セメント)は使ってません。 |
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ビタペックス
多くの歯科医院で使っていると思います。水酸化カルシウムを主体とした非硬化性のお薬です。 |
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