教室の隣の席が「そいつ」でした。図体がでかいばかりで、頭の悪いヤツです。ハッキリ言って、教室の中で1,2を争うぐらい嫌われています。
授業中、突然「そいつ」の鉛筆が僕の手に刺さりました。僕は「痛っ!!ダメじゃないか!!」と言ってその鉛筆を取り上げました。
「オレの鉛筆返せよ〜」
「君が鉛筆振り回して僕の手に刺さったんだぞ」
「うるせぇな。返せよ!!」
そいつは「ペッ ペッ」とツバを吐きかけたり、足を蹴飛ばしてきたりします。ふと、先生の方を見ると口には出して言いませんが「騒がしいな、、面倒だから返してしまえよ」というそぶりを見せています。蛇足ですが僕は以前、その先生から思いっきりげんこつを二発お見舞いされています。
「そいつ」は、おまけにこんなコトまで言い出します。
「もう、お前んちの歯医者になんか行かないからな」
そうです。ウチの家業は歯医者なのですが、そいつの家は大家族なので「もう行かないからな」というのはけっこう痛手なのです。他の八百屋さんの子も、お魚屋さんの子も、実は「そいつ」が大嫌いなのですが、お得意さんなのであまり軽々しく絶交も出来ません。
それを知っているから「そいつ」はますますつけ上がっています。
「じゃあ、しょうがないから鉛筆返すよ」
僕はしぶしぶ鉛筆を返しました。
でも、厚顔無恥な「そいつ」はこんなことまで言い出しました。
「鉛筆取ったことを謝れよ、それとレンタル料払えよ」
僕は鉛筆を返してあげたことで、クラスの女子から「やっぱり大人よね。それに比べてヤツは悪いコトして謝りもしないんだから、、、」と思って欲しいのですが、実際は「ふん、弱虫・・」と陰口をたたかれています。 |